その言葉にドキリと心臓が動いた。
『仁菜は結んでた方が可愛いね』
それは、付き合っていた頃に
誠くんから言われていた言葉だった。
私はそう言ってくれたのが嬉しくて
次の日から、誠くんの好みに合うようにと
毎日髪を結んで
めんどくさくても、誠くんと会う時は必ずしばるようにしていた。
だから、
私がさっき高村に言った
『私は、こっちの方が好きだからいいの』
という言葉はウソだ。
本当は誠くんが気に入っているから
その髪型を変えることが出来なくて、未練タラタラで
今もまだ、全然諦められてない
情けないやつなんだ。


