______灰色の街並みは依然変わりなく、依然として誰もいないことに慣れてしまった自分を皮肉に想いながらも空を見上げた。
「今日も、日差しが少ないな」
灰色の雲の向こうに若干だが太陽の光が見える。そして、灰色の雲の向こうには、もう一つ別の雲が見えた。
「あれは……入道雲か? 」
日付付きの時計が正しいのなら、今は十月の初め頃である。なぜ、そんな時期にあんな雲が?
などと考えていた時、視界が一瞬光ったかと思うと、地が裂けるような轟音と共に雷が鳴り響いた。
「っ! 」
咄嗟に耳を押さえてしまう。しばらく轟音が鳴りやむのを待ち、頭を振って耳鳴りを消そうとした。
「あ? あれは……」
その時、偶然視界に映った灰色の雲に、僅かな裂け目が開いてるのが見えた。
______"何か"が"起きた"気がする。
というのも、先程の雷が落ちた場所を探しているのだが、どこにも雷の跡が見当たらないのだ。
瓦礫の山によじ登り周囲を見渡すが、火の手が上がっている場所も衝撃で生まれるはずの黒焦げた後も無いのだ。
しかし、あの音からして近くに落ちた可能性は大きい。だが落ちた後が見当たらない。
これが結びつく答えは……
「ん? 」
方南町商店街の瓦礫の中を悶々と考えながら歩いていた時、曲がり角の向こうで可笑しなものと対面した。
その時声をあげなかったのは、あまりに驚いていたからだろうか。
そこには、灰色の街並みに溶け込むように、真っ白なワンピースを着た少女が倒れていたのだ。
「ッ! ……」
その少女は、驚くほど白い髪の毛が腰のあたりまで伸びており、顔の半分を雪に埋もれさせている。歳は俺と同じくらいだろうが、まだ幼げな顔立ちが目立つ。
まるで月明かりを浴びた"あの花"に似ているなどと感じていたが、すぐさま頭を切り替える。
「おい」
声をかけるが反応がない。背中がゆっくりと動いているので、死んでいる事はないだろう。
しかし、ここら一帯は何度も歩いたはずであり、その時にこんな少女が…いや、俺以外の誰かがいたことはなかった。
「おい! 」
とにかく、謎を秘めた少女にもう一度強く声をかけた。
相変わらず返事はない。
とりあえず早足で距離を詰めながら、少女の姿をもう一度うかがってみる。
歳は俺と同じか少し上くらいだろう、華奢な身体に白くて長い髪の毛を生やした少女。横向きに倒れているため顔は半分しか見えないが、整っていると思う。
「ん……」
すぐ近くまで来たとき、少女がうっすらと目を開けた。少し青い瞳が、ぼんやりと揺れている。
「……大丈夫か? 」
得体のしれない相手とはいえ、目の前で少女が倒れているのだから心配はする。
それに、久しぶりに出会った人間なのだから、無事でいてほしい。
「ここ…どこ? 」
ゆっくりと手を付き、身体を起こしながら小さな声で、それでいてはっきりした声でそう言った。
「見ての通り、瓦礫の町だ。……お前、いったい何処から来た? 」
自分のいる場所が分からない、ということは別の所から来た可能性があるという事だ。
そう、どこか別の、人が集まっているところ……たとえば避難所などから。
「わかん、ない……」
だが、少女は首を横に振った。それに、なぜだか言葉がたどたどしい。
「ふぅ……」
どうしたものか。放っておくわけにもいかないが、何か面倒事になる気もした。
そう考えていると、少女はゆっくりと立ち上がって、すぐに倒れかけた。
「っと、大丈夫か? 」
間一髪で支えられたものの、この少女の身体は驚くほどに軽い。
「……身体、重い」
だが、少女はこちらの考えとは逆の事を言う。危なっかしく、素性もよくわからない相手ではあるが…
「……とりあえず、家まで運ぼう」
やはり放っておくのは少ない良心が咎めたので、いったん家まで運ぶことにした。
「今日も、日差しが少ないな」
灰色の雲の向こうに若干だが太陽の光が見える。そして、灰色の雲の向こうには、もう一つ別の雲が見えた。
「あれは……入道雲か? 」
日付付きの時計が正しいのなら、今は十月の初め頃である。なぜ、そんな時期にあんな雲が?
などと考えていた時、視界が一瞬光ったかと思うと、地が裂けるような轟音と共に雷が鳴り響いた。
「っ! 」
咄嗟に耳を押さえてしまう。しばらく轟音が鳴りやむのを待ち、頭を振って耳鳴りを消そうとした。
「あ? あれは……」
その時、偶然視界に映った灰色の雲に、僅かな裂け目が開いてるのが見えた。
______"何か"が"起きた"気がする。
というのも、先程の雷が落ちた場所を探しているのだが、どこにも雷の跡が見当たらないのだ。
瓦礫の山によじ登り周囲を見渡すが、火の手が上がっている場所も衝撃で生まれるはずの黒焦げた後も無いのだ。
しかし、あの音からして近くに落ちた可能性は大きい。だが落ちた後が見当たらない。
これが結びつく答えは……
「ん? 」
方南町商店街の瓦礫の中を悶々と考えながら歩いていた時、曲がり角の向こうで可笑しなものと対面した。
その時声をあげなかったのは、あまりに驚いていたからだろうか。
そこには、灰色の街並みに溶け込むように、真っ白なワンピースを着た少女が倒れていたのだ。
「ッ! ……」
その少女は、驚くほど白い髪の毛が腰のあたりまで伸びており、顔の半分を雪に埋もれさせている。歳は俺と同じくらいだろうが、まだ幼げな顔立ちが目立つ。
まるで月明かりを浴びた"あの花"に似ているなどと感じていたが、すぐさま頭を切り替える。
「おい」
声をかけるが反応がない。背中がゆっくりと動いているので、死んでいる事はないだろう。
しかし、ここら一帯は何度も歩いたはずであり、その時にこんな少女が…いや、俺以外の誰かがいたことはなかった。
「おい! 」
とにかく、謎を秘めた少女にもう一度強く声をかけた。
相変わらず返事はない。
とりあえず早足で距離を詰めながら、少女の姿をもう一度うかがってみる。
歳は俺と同じか少し上くらいだろう、華奢な身体に白くて長い髪の毛を生やした少女。横向きに倒れているため顔は半分しか見えないが、整っていると思う。
「ん……」
すぐ近くまで来たとき、少女がうっすらと目を開けた。少し青い瞳が、ぼんやりと揺れている。
「……大丈夫か? 」
得体のしれない相手とはいえ、目の前で少女が倒れているのだから心配はする。
それに、久しぶりに出会った人間なのだから、無事でいてほしい。
「ここ…どこ? 」
ゆっくりと手を付き、身体を起こしながら小さな声で、それでいてはっきりした声でそう言った。
「見ての通り、瓦礫の町だ。……お前、いったい何処から来た? 」
自分のいる場所が分からない、ということは別の所から来た可能性があるという事だ。
そう、どこか別の、人が集まっているところ……たとえば避難所などから。
「わかん、ない……」
だが、少女は首を横に振った。それに、なぜだか言葉がたどたどしい。
「ふぅ……」
どうしたものか。放っておくわけにもいかないが、何か面倒事になる気もした。
そう考えていると、少女はゆっくりと立ち上がって、すぐに倒れかけた。
「っと、大丈夫か? 」
間一髪で支えられたものの、この少女の身体は驚くほどに軽い。
「……身体、重い」
だが、少女はこちらの考えとは逆の事を言う。危なっかしく、素性もよくわからない相手ではあるが…
「……とりあえず、家まで運ぼう」
やはり放っておくのは少ない良心が咎めたので、いったん家まで運ぶことにした。