しばらくして、立ち上がろうと身体に力を入れる。しかし、腹にたいした物が入っていないせいか、身体が強張ってうまく立ち上がれない。

 これでよく生き残れたものだなと、自然と苦笑いが浮かぶ。

 あの大地震が立て続けに起きた数日間。日本が枯れた花の様にボロボロになった日々を生き残った事は事実だが、実際は運が良かっただけにすぎない。

 持病の不眠症とうつ病の発作の中、フラフラと死んだようにさ迷っていた……そして、ようやく意識がはっきりしたと思ったら、周りから人の姿が消えていた。

 そんな有様だから、何が起きたのか詳しく知らないが、ただ一つ確かな事は______

「この三週間、生存者は誰もいないことっ」

 吐き捨てるように言いながら、再び灰色の街中を進んでいったのだった。




 ______すでに引きずった道は見えないところまで続いており、体力も厳しくなってきたが。

「……見えてきた」 

 ようやく目的地までたどり着けたようだ。

 

 大きな入口と、地上三階建ての駐車場を備えたホームセンター。かつては客でごった返していたが、今は傾いた廃墟となっていた。

 しかし、この廃墟の中には食料やら生活用品がそろっている。宝の山ともいえた。

 さっそく引きずってきた袋の中から軍手等の探索用の道具を取り出し、一応店の形は保たれているので、入口から入っていった。


「ん?」

 そんな時、入り口近くにひび割れた大きな鏡が、所在なさげに立てかかっていた。

「……」

 そこに映る姿は、とても今年で十八歳になる男の姿ではないと、皮肉に思った。

 ストレスで白く濁った頭と、寝不足で鋭くなった二重の瞳。細くヒョロッとした身体と、不健康な色白の肌。

 まるで映画で見たゾンビの様だと皮肉に思う。まぁ…色が青白くないだけまだ人間だろうか。

「……食べ物探すか」

 何度目かのため息とともに、薄汚れた店内へと入っていった。