灰色な雪道の中、ボロボロの袋を引きずって歩くと、何か大きな動物が這った様な道が出来上がる。

 そしてそんな道は、こんな灰色な街中でも目立つので、自分がどれだけ歩いたのかよくわかる。

「ふぅ」

 辺り一面が灰色な瓦礫の山ということには、なかなか見慣れることはできず、ため息をつく。

 この雪が灰色ではなく真っ白な雪だったのなら、きっと一面がクレマチスやユリが咲き乱れる花畑に見えたのだろうが、これではただ埃まみれに見えるだけである。




 
 ______「休むか」 

 とある場所から数十分ほど歩いたところで、いったん腰を下ろすことにした。

 傾いた電信柱に背中を預けて、深いため息を付きながら座り込む。

 本当ならもっと灰色の雪が降ってこないところで休みたいのだが、生憎とそんな気力も体力も持ち合わせていない。

「……ああ、ここまで来てたのか」

 腰を下ろした時、視界の先______今にも崩れそうな瓦礫の街並みの一角に、ひしゃげたプレートが落ちていた。

 『方南商店街』少し前までの、ここら一帯の呼び名である。小さい商店街ながらも、かつては活気にあふていた。

 だが今は、違う。おいしい焼きたてのパンを作っていたパン屋は、地割れで姿を消し、人気のアイスクリーム屋は隣の建物に潰され______色とりどりの花をそろえていたお気に入りの花屋は、瓦礫と雪に埋もれて見えなくなっていた。 
  
 そんな、かつての賑やかだった風景を思い出しながら、もう一度深い溜息をついた。