------父さん、母さん……僕を1人にしないで……。

 


 暗い闇の中、俺は一人、膝を抱えて座り込んでいる。

「また、いつもの悪夢だな」

 何度も繰り返し見てきた悪夢。両親が誰かに殺されていく風景を見る悪夢。

 そして、何度見ても思う。"あの時"勇気があれば、と……。

 そして再び繰り返される過去の映像。少しずつ俺の神経を蝕んでいくトラウマの波の中で、抗う事を忘れて漂っていた。



  ------その時、そんな夢の中に一筋の白い光が射した。

 それはとても暖かくて、こんな悪夢の世界とは真逆に光ってて……

 気が付くと、夢の中でその光に手を伸ばしていた。




  ------「起きた?

 頭の後ろからスノウの声がする。

 まだぼんやりとした意識の中、スノウを探すと、一番近くに居ることが分かった。

 そうか、スノウはずっと俺の事を……

「……ありがとう」

 時間は俺が倒れてから三十分は過ぎている。そして、恐らくスノウはずっと俺の事を抱きしめてくれていたのだろう。

 ------何か、心が少しだけ軽くなった気がした。

「よし、出かけよう」

 スノウのおかげで悪夢から抜け出せた。ならば、その恩返しをしなくてはならない。

 何かしら物を詰めることに使えそうな袋を瓦礫の中から引っ張り出し、それを引きずって、灰色の町に繰り出す。 

「さぁ、一緒に行こう」

 そう言って手を差し出す。今までスノウはお留守番ばかりしていた。それは記憶の事もあるから刺激はあまり多くない方がいいのでは? という考えからだったが、やっぱり外に出て身体を動かした方がいいに決まっている。

「わか、た。いまいく」

 つっかえながらも、スノウは差し出した手を取ってくれた。