「そんなの事実無根だよ。よくバスケ部の練習見に来るからそんな噂たったみたいだな」
「そう…なんだ」
事実を知ったら拍子抜けで、それしか言葉が出てこなかった。
望がニヤリと笑って顔を近づける。
さっきから近いのに、さらに近くなって、あたしは逃げ出したくなった。
でも、横も前も後ろも塞がれて、逃げ場なんてない。
「妬いた?」
「や…妬いてなんか…」
ちょっとでも動けば望に当たりそうで、緊張する。
「ふーん。まあ、いいけど。で、今日はなんで不自然なくらいに俺を付け回してたんだ?」
「えっ」
「朝も、昼も、放課後もずっと見てただろ?」
全部バレてるー!!!
「そ、それは…」
あたしは返答に困った。
おばさんに頼まれたとはいえ、これ、本人にバラしちゃってもいいの?
「言わなきゃキスするぞ」



