「からかわないでよ」
「からかってなんか、ない」
望はあたしを囲うようにして扉に両手をついた。
あたしは少しでも距離を取りたくて、後ろに下がろうとしたけど、すぐに背が扉についてしまう。
「でも、望、彼女いるでしょ?」
「は、彼女?」
「早乙女さんと付き合ってるんじゃないの?」
「なんで早乙女?」
「だって、今日の朝、教室で二人で会ってたでしょう?」
あたしは朝の二人を思い出し、胸が痛くなった。
美男美女のカップルで、あたしといるよりずっとお似合いだ。
望はあたしをじっと見て、クスクスと嬉しそうに笑いだした。
「彼女は同じバスケ部の三木の彼女だよ」
「三木くんの?」
「でも、早乙女さんが望に振られたって噂も…」



