いつの間にか真後ろに、望が笑みを浮かべて立っていた。
笑ってるのに、目が笑ってない。
その状況に、あたしは体が硬直したようになって動かなかった。
「いつもは俺のことなんて無視してるくせに、今日は俺の周りで何してたんだ?」
「そ、それは…」
「それは?」
ひいっ。
低い声に怖くて、あたしは息をのんだ。
「た、頼まれただけだから!!」
あたしは金縛りから逃れるように、手を振り切ると、全力で走り出した。
「おいっ」
望の呼び止める声が聞こえるけど、足は止まらない。
途中、部室から出てきたバスケ部のメンバーたちとすれ違った。
ちょうど無人になった部室が視界に映り、あたしは何も考えずにそこに飛び込んだ。
だけど、部室の中は部員の荷物が乱雑にあったけど、死角になる場所がなくて、あたしは冷や汗を感じた。



