「どうした?」
「ううん、なんでもないの」
望と彼女の声が聞こえた。
覗いてたことを変に思っただろうに、騒ぎ立てない彼女にホッとした。
あたしは四つん這いでその場から離れると、立ち上がってトボトボと廊下を歩いた。
そっか、本当に彼女がいたんだ。
早乙女さんが望に振られたって噂は、もしかしてその逆の、付き合ってることを隠すカモフラージュ?
それなのに、噂を真に受けて、バカみたい。
あーあ。
望を一日見張る必要もなくなっちゃったか。
変な任務から解放されて嬉しいはずなのに、なぜか胸にぽっかり穴が開いていた。



