望は結構鋭い男なのだ。
どんくさいあたしが望をこっそり調査?みたいなことできるわけない!
だいたい、もしも本当に彼女がいたら――あたしは胸がツキンと痛んだ。
「ほら、成功報酬の前払いのケーキ、食べたでしょ? よろしくね」
にっこり笑ったおばさんの顔が悪魔に見えた。
***
望に彼女なんていたら、すぐに噂になってわかるはず。
噂が立たないんだからいないと思うけど、
おばさんを納得させるために今日一日だけ望を見張ることにしたんだよね。
そんなことを考えながら歩いていると、学校が見えてきた。
「それで?」
「ん?」
「おまえ、こんな朝早くに学校に来て、どうするんだ?」
「あーどうしようか」
あたしは目を泳がせた。



