なんでみんながこんなに騒ぐのか私には謎。

あんなヤツ、負けず嫌いのただのガキなのに、知らないっていうのは恐ろしい。

だけど、アイツの腕は確かなんだ……。

たったひとりで、強行突破していくアイツ。

トリッキーな動きで翻弄されて、誰にもアイツを止められない。

ベンチ前を通り過ぎる。

アイツが起こした風が私の前髪を吹きあがらせる。

はじけ飛ぶ汗がキラキラと散って、黒い髪がサラリと揺れる。

みんな手も足も出せずに、アイツはもうスリーポイントラインの前。

みんながアイツに注目した。

舞い上がるように床を蹴って、無理なく上へ伸ばした手で、スッと、ボールを放つ。

歓声がやむほどの美しいフォーム……。