私はまだ、ガラスの靴を履く勇気がない。




「夢…ごめん。先行ってて」


「…え?だって…姫ちゃんここら辺の道分かんないでしょ?」




夢は笑いながら言う。



「あは…お腹痛い…」



私は苦笑いした。







夢からそっと離れると、今度は後ろを向く。



「…大神君、だよね?」




一瞬、静まり返ったと思った。



でも、そんなわけなかった。






夢が近くに寄る。





「ごめんごめん。ちょっとツボ入っちゃった」



屈託なく笑う。



「…ん?」





夢は私に顔を近づけて、「どうしたの?」と聞いてきた。





「え?何にもないよ?」




私は精いっぱい笑顔を作った。




「ふーん…」









夢は、明らかに不審そうな顔をしていたが、すぐ笑顔になって私の手を引いた。