この日は、簡単な自己紹介と学校説明だけで終わりだったので、11時位には解散となった。
「姫ちゃん帰ろっ」
夢が机の前で早くするよう急かす。
分かったと私は答えて、夢とともに教室を出た。
「なんか今日寒いねー。…春なのに」
「うん」
私たちの間をすり抜ける冷たい風。
朝は結構暑かったのに…と私は溜息をついた。
だから校舎裏なんて、この季節じゃ絶対寒い場所でも普通に居られたのだ。
ふと、大神君との会話が頭に浮かんだ。
可愛いと言ってくれたあの笑顔。
ドキドキした初めての会話。
たとえあの動機が、特別なもので無かったとしても、その感情が初めてだったことは私にとってまぎれもない『大切なもの』だ。
もう一度、大神君と話がしたい。
私はそんな事をボーっと考えていた。

