放課後、昇降口まで孝太郎を送り届けてから、
杉村君と教室に残ってパンフレット作りをしていた。


「雨宮さ、天野…だっけ彼氏。
俺も県外受験でさ、
あいつと同じ中学だったんだけどさ、
どこが好きなの?」

「え?どうしたの急に」

作業をしながら答える私。

「正直、雨宮ってかなり可愛いじゃん。
何であいつなのかなって…。
まぁあいつも顔がいいって評判だけどさ」

「孝太郎は、優しいよ…?」

杉村君は手を止めて、真っ直ぐ真剣な瞳で私を見た。

「…その腕の傷、天野だろ?」

「っ…!」

図星だね、そう言って作業を再開させた杉村君。

「あいつ中学ん時荒んでたっつーか…
誰ともつるまなかったから気になってたんだけど。」

ー孝太郎の過去を、私は何も知らない。

「あいつが何で県外にわざわざ受験したと思う?」

ーこんなところで勝手に知ってしまっていいの?

「あいつ、親に捨てられてるんだよな」

ーやっ…



「やめてっ…」

椅子が音を立てて倒れた。

「もう、やめてよ…」

そんな私を見て、ふっと笑った。

「ごめんね。
俺は別に雨宮を攻めたかった訳じゃない。
でも、その傷は明らかに…
だからさ、何かあったら俺に相談してよ」

「っ…ありがっ…と」

涙が溢れ出した。
心が軽くなった気がして、
そのまま私は泣き続けた。