「あがって。」


詩織と手をつなぎ、歩いて帰るわずか15分間。


嬉しくてスキップしたくなる、子供みたいな自分を抑えながら帰宅する。


「お邪魔します…」


恐る恐る上がる彼女の姿。

見回すと、クンッと匂いを嗅ぐように深呼吸した。

「祐太朗さんの匂いだ…」


ようやくいつもの笑顔になる。
ふわりと髪を揺らし、狭い部屋を歩き回って俺の元に戻ってきた。



「なんだかマンションと同じに見えます。」


はにかむ詩織を抱き寄せる。


「詩織…抱きたい。ダメか?」


首を横に振る。
小さな声で「わたしも…」と答えた彼女を掻き抱く。


「会いたかった…」


キスしようとして、はたと気付く。


「待って、顔洗ってくる。」


そう言う俺に抱きつき唇を寄せてきた詩織。


「わたしが消してあげる…」


重なる唇は甘くて。
さっきの事を忘れてしまうほど、それは欲しかったもの。


「祐太朗さん…好きよ…」


首に回された細い腕。

抱き上げても軽いままの詩織。


「詩織、もう離れるのは嫌だ。お前がいないと気が狂いそうだ。

…避妊、しなくていいか?」


そう告げた俺を驚いたような表情で見たものの。


花のように綻んだ彼女の顔がYESと答えていた。


ソファに押し付けるように寝かせて。

見下ろす彼女は優しく笑っていて。


「祐太朗さん…」


俺の頬に触れた指は、暖かくなっていた。