「そういやぁ写真どうするんだ?もう20年も前の写真なのに…」


自宅に戻り、不思議に思ってそう聞くと、ふふっと詩織は笑う。


「わたしの知らない祐太朗さんを知りたいだけよ。」

詩織の知らない俺…。

俺の知らない詩織かぁ。

見てみたい気もする。


「俺も知りたいな、お前のこと。」



隣に座る彼女の肩に手をやり、ゆっくりと抱き寄せる。


「面白い事なんか何も無いわ。
人の名前を覚えるのが苦手で、あまり友達が居なかったし…彼氏もいない学生時代だったし。」


腕の中でぬくぬくと微睡む猫の様に、俺の胸に身体を預けて詩織は呟く。


「お陰で俺が詩織の全てを貰えた訳だけど。」


彼女の顎に手をやり上向かせて口付ける。
深く。
絡み合う舌が甘いなんて、俺は知らなかった。

「…ん…ッ」


鼻にかかる上擦った声が漏れる。


「出来ることなら離れたくない。


…身体を繋げたままがいい。」

「そんなの…無理よ…」


当たり前なんだろうけど。

過ぎて行く時間が勿体無く思えて、ずっとこうしていたいと思わずにはいられない。


「早く俺のものになればいいのに。」


そうすればこんな焦燥感、感じなくても済むのに。


「祐太朗さん…」


ゆっくりと背中に回された細い腕。

甘い香りが鼻をくすぐる。



「大好き…」