それから一週間はあっという間に過ぎて行った。



「どうするか決めたか?」



会議室に再び呼び出された俺は、部長にややニヤニヤしながら問われる。


どうやら、先日の詩織とのやりとりが物凄い勢いで会社中に知れ渡っているらしい。



「はい。是非支店の方に行かせて頂きたいと思います。」

「いいのかい?大切な人とは折り合いがついたのか?」


心配そうにそう部長は言葉を零した。


…それを言わなきゃならないのか、部長に。



「彼女はまだ若いです。我が社に必要な人材でもあります。
そんな一社員である彼女を僕の我儘で連れて行く訳にはいきませんので。」


そう、一気に言い切ると。

部長は意外そうな顔をしていた。


「結婚して連れて行こうとか思わなかったのかい?」


…どれだけこの一週間で詩織を泣かせたかわからない。


話し合いをずっと続けていた。


離したくない、でも離れなければならない。

ついて行く、全てを捨ててもあなたについて行く。


そんな同じ意味の言葉を何度やり取りしたことか。



「まだ付き合い始めて少ししか経っていません。…一回り以上歳上の僕に付いてきて彼女が後悔してしまっては意味がないんです。」


それだけ言うと静かに頭を下げて退出した。