咲に手渡された箱は、ピンクゴールドのリボンが掛けてあって。


まるで時期外れのXmasプレゼントみたいに見えた。



「ラッピングは無料。正確には2万7千円だけど3万でいいよね?

お楽しみ袋が入ってるから2人で見てよね!咲様からのサプライズよ。」



「仕方ねぇから3万でいいよ。詩織にプレゼントするんだから気にしてないしな。週末邪魔しに来るなよ。」



そう釘を刺す。

邪魔なんかされたらたまったもんじゃない。


「あー、ハイハイ。ま、開けてのお楽しみだからさ。それと祐太朗にはコレ。」


手渡されたのは掌に乗るくらいの小さな箱。

なんだこれ。


「祐太朗は案外抜けてるからさ、用意してないでしょ。」

「なんだよこれ。」


用意?何を用意してないっていうんだ?


「コンドーム。」


人差し指をピシッと俺に向けて言い放った咲。



「お…お前さ、女としてどうなんだよソレ。」


ため息をつきながらそう言う。
俺はとんでもない奴を妹に持ったのかもしれない。

「必要でしょ。詩織ちゃんを泣かせたら許さないわよ?」


…泣かせたりはしないけど、鳴かせるかもしれない。



「車で来たから送るわよ。早く帰ってあげなさいよ。」


「あぁ。頼む。」



咲に振り回されているようで、実はちゃんと指導されている。


なんだ、この兄妹図。

憎たらしい奴なのに憎めないんだ。






予定より少し早く帰宅する。


玄関先にかけてきた詩織はニコニコしている。

「おかえりなさい!」

「ただいま。」



なんかいいな、こういう雰囲気。
家庭、家族、あったかい関係。
詩織とこうやってずっと過ごして行きたい。



「あれ?それどうしたんですか?」



手に持っていた例の箱を見て不思議そうに首を傾げる。



「うん、とりあえずリビングに行こうか。」


ゆっくり落ち着いて話をしたい。



「詩織、これ咲から預かってきたんだ。」


そう伝えただけで意味が分かったんだろう。


ふわっと赤く染まる頬を両手で押さえる。


「それで、有給取った方がいいって言ったんですね。」


「ん。ごめんな。」

「いいえ…でも。嬉しいです。」

箱を受け取りぎゅっと抱きしめたまま、詩織は笑う。

「それって…それだけわたしのことを…」

「そうだよ。」


こんな風に誰かを想うなんて、想像すらしなかった。


俺を変えたのは間違いなくお前なんだよ、詩織。


「着替えたら見せて。俺にだけ。」


まっすぐ見つめてそう言うと、詩織はゆっくりと頷いた。