「自分で支払いするのに。」



奢る、奢られる、とにかく何においても平等でないと必ず不満を口にする詩織。



言うだろうな、と思っていたら案の定。



「さっきも言ったろ。」

「あんなの理由になりません。」

「じゃあ詩織は俺には見せてくれないって訳だ。へぇ。」



あからさまに不貞腐れてやる。
だってそうだろ?
俺はプレゼントしたいんだ。

惚れた女にプレゼントした下着を自分で脱がせる。


こんな美味しいシュチュエーション、譲れないだろ。


「すけべオヤジに見せるなんて嫌だって訳だ。まぁいいけどね、どっちでも。」



座っていたソファから立ち上がり、キッチンに向かう。


譲りたくないから、詩織が納得するまで知らんぷりしておこう。


「祐太朗さんはすけべオヤジなんですか?」


…論点がずれてやしないか?


「そりゃあわたしより15も歳上だから、女性との経験は沢山あるんでしょうけど…。わ…わたし…経験無いから祐太朗さんの気持ちとか、そういうの理解できないです…。」



…は?今何て言った?

理解できない?

いや、もう少し前。


ーわたし経験無いからー


そう言わなかったか?


キッチンから出て詩織の側に立つ。
聞き間違いじゃないよな?



「詩織、お前もしかしてバージン?」



ぱちん!



言葉を口にした瞬間、左頬に痛みが走った。

叩かれたのに気付いたのは、そのすぐ後。



「そっ、そんな事大きな声で言わないで‼︎」



真っ赤になった詩織。
間違いじゃないわけだ。


「大事な事だろ?詩織の事は俺にとって何よりも大切な事だ。
話半分で適当に済ませていい事じゃない。そうだろ?」



俺を見つめてくる詩織の真っ直ぐな目が揺らぐ。
照れ臭いのだろう、真っ赤な顔をしたままだ。



「だってっ」

「大事な彼女のことなんだ。」



手を伸ばし、掌で柔らかな頬を撫でる。
大好きな彼女のしっとりとした肌。



「君が欲しいと思う俺はすけべオヤジって?普通の事じゃないか?」


「だってっ、わかんないんです、ほんとのほんとに!」


首を左右に振るとフワフワの髪が揺れた。