「新作のカタログ!

祐太朗、何か買いなさいよ。詩織ちゃんにプレゼントしたらいいじゃん!」


…いやいやいや、待て。



そんなキワドイ物プレゼントしたら、なんかもうモロに欲しがってるみたいだろ。


「何のカタログなんですか?」



咲から手渡され、ページをめくる詩織の手が止まる。


「わぁ!すっごくカワイイ!」


巻頭ページのモデルを見て声を上げた。



「でっしょー!それ、あたしプロデュース!」


咲は下着メーカーに勤務している。
主にデザインする側。


普通の下着カタログだが、中にはホントにキワドイものもあったりして…。



「詩織ちゃんにはこれかな〜、色白だから黒とか、似合いそう!」


咲は数ページめくると指差し、俺を見た。


…こいつ。



俺と詩織がもう、そういう関係だと勘違いしてるな。



…詩織が欲しがるなら買わなくもないけど。



「下着ってさ、結構大事よ〜?
身体のラインをキレイに見せてくれるし、何よりも男女関係においてセクシーな下着はその気にさせるしねっ。」



咲は詩織の顔を見ながら話す。


買って、買って。

あたしから買って。


売り上げに貢献して。



そんな表情だ。


「可愛い…でも高いからなかなか手が出ない。でもなぁ…こっちもいいなぁ。」



悩んでいる詩織を見て、咲がもう一押し、とばかりに言う。



「社販で7掛けでいいよ!」


「えっ、本当⁈」


あぁ、釣られてしまってる。


でも、釣られてるってわかってるのに、買ってやる俺がいるんだよな。
笑える。


「じゃあ。このセットと…これ!」



俺には見えないように指差してるって事は、知られたくないってことだよな。


「咲、支払いは俺がする。」

「祐太朗さんっ」

詩織が止めようとしたけれど、それを言葉でねじ伏せた。



「俺に見せてくれるんだろ?だったら俺が払う。自分のものなんだから、変じゃないだろ?」



真っ赤に染まる詩織の頬。


あんぐりと口を開けたままの間抜けな咲。


「恥ずかし気もなくよく言うわー!
ま、買ってくれるならどっちだっていいけどさー。
…祐太朗のすけべオヤジ。」



…すけべオヤジで何が悪い。



惚れた女がいてその気にならない方がおかしくないか?




…未だそんな関係にならない自分達に焦りを感じてるのは事実だ。



詩織が初心なのか。



…俺に魅力がないだけなのか。