どれくらいそうしていたのだろう。


日付はとっくに変わり、20日になっていた。



ゆっくりと身体を離し、ソファに座るように促す。


「何か飲む?」

「あ、わたしやります。」


「いいよ。俺が淹れてくる。カフェオレで大丈夫?」

「はい…。」


キッチンに向かい手早くカフェオレを作る。慣れたもんだ、毎日作ってるんだから。


「ところでさ。」


少し意地悪してみたくなったんだよな、今、急に。

「俺の名前、わかる?」


痛いところを突かれた、とばかりに彼女は眉尻をさげる。


「神山課長。」


そうくるか。

「はははは!そりゃそうだけどさ。プライベートまで課長は嫌だなぁ。」

だいたい、誕生日とか聞いて回ったりして、なんで名前はスルーなんだよ。


「ゆ…」

「ん?聞こえないけど。」


カフェオレの入ったグラスを手渡し、隣に腰掛ける。


「祐太朗さん…」


俯いた池永の顔は真っ赤で。
可愛くてついいじめたくなるんだよ。


「よく出来ました。詩織?」


覗き込もうとすると、顔を背ける。


「好きだよ。」


もう一度、ゆっくりと言う。


こんなにも、好きが溢れてる。

こんな気持ちは初めてで戸惑うけれど。
君が隣にいてくれるなら、いつまでも誓えるよ。


「好きだ。」


君の耳元で。
心に。