あの日。


6月の終わりに初めて池永のうちにお邪魔して。



特に何があるわけでもない、食事をして他愛のない会話をして。



そんな楽しい時間を過ごせたことが、俺にとっては大きな変化だった。



今まで付き合ってきた彼女達には感じなかった感情。


可愛いとか綺麗だなとか、そういった感情じゃなく、『守りたい・守ってやりたい』という思い。



なんでなんだろう。



池永にだけ、そう思うのは。

咲に尋ねると、それが愛情なのだという。

俺は今までそういった思いで女性と付き合ったことがなかった。


改めて思うのは、最低な男だったという反省。
でも、だからと言って池永と付き合うとか好きだと伝えるとか思わないようにしていた。



何故なら。




彼女は叶わぬ恋を諦めないと俺に誓っていたからだ。




辛くないと言えば嘘になる。



でも、いい距離感で彼女を見ていられる。



それが今の俺には楽しみになっている。