「祐太朗さん…」


真っ赤な顔のままの詩織が、ポロリと涙を零した。


「全てのものからお前を守りたい。お前を笑わせたい。幸せにしたい。…どうすれば叶う?」


「何も…いらない。側に居たいの…」


イヤイヤをするように首を左右に振る。

緩やかなウエーブがかかった長い髪がゆれて。

「指輪、買いに行こうか。」


そう伝えて詩織の手を取る。


震える彼女の手は、俺が何故そんなことを話したのかちゃんと理解しているかのように力強く握り返してきた。


「あら、じゃああたしも智に買ってもらおうかしら。」


菊池がそう言うと、伊島は背筋を伸ばす。

「瑞季が俺の嫁さんになるなら、いいよ。」


真面目な奴の表情は初めて見た気がする。

いつもポーカーフェースな奴の、真面目な一面。


「いいわよ?なってあげても。そのかわり、神山課長が買う指輪よりいい指輪じゃなきゃYESとは言わないわ。」


…らしいな、どうする。


そんな2人を見ていて。
隣に立つ詩織に言いたくなったんだ。


「詩織?」


「はい?」


「愛してる。もう離れるな。」


そんなワガママな俺の言葉に、詩織はただ深く頷いた。