ウィリアムは少女を抱えあげ、歩道を走りだした。

後を追う銃弾。

悲鳴。

弾があたってはじけたレンガが舞う。

ウィリアムは、用水路の上に架かる橋を渡り、古いレンガ造りの家が並ぶ薄暗い路地に駆け込んだ。

銃声は止んだ。

息をひそめる。



しばらくじっとしていた。

不審な人物は現れない。

「…よし。もういいぞ」

はぁぁ、と少女は長い息を吐いた。

そして、ウィリアムにぎゅっと抱きついていることに気づくと、慌てて離れた。

隣で体育座りをする。

「なーに照れてんだ」

ウィリアムが頭をこづくと、少女は頬を赤らめてそっぽを向く。

なんだ、可愛いところもあるじゃないか。