ウィリアムは、こめかみから垂れてくる血を、シャツの袖で拭った。

シャツが白いせいで、血痕が目立ってしまっている。

「ねえ、これからどうするの?」

「心配すんなって。こういうときに頼りになるやつがいるんだよ」

そう言って、ウィリアムはマリアに笑いかけた。

マリアはドギマギしてうつむいた。



ウィリアムがマリアを連れて行ったのは、建物と建物の隙間だった。

ウィリアムはおもむろに、足元のマンホールの蓋をずらして、梯子に足をかけ始めた。

マリアは呆気にとられて言葉も出ない。

「なにボーッとしてるんだよ。早く降りろ」

「なにそれ!?げ、下水道だよね!?」

「当たり前だろ?今狙われたら一巻の終わりだし、そもそもアイツん家は下からじゃないと入れないからな」