「じゃ、このままここにいるわけにもいかないし、俺の事務所に行こう」

ウィリアムは、壁に寄りかかりながら立ち上がった。
横目で少女を見ると、心配そうな顔でウィリアムを見上げている。

「ねぇ、あなた、肩が…」

ウィリアムは自分の左肩を見た。肩から袖口まで、じっとりと赤く濡れている。

「ああ、これか。あれだけ撃ちゃあ当たるだろうな。腕前には疑問が残るわけだが…」

「でも…」

「心配するなって。怪我には慣れてるから。ほら、立て」

ウィリアムは空いている手で少女を立たせた。

細い路地を出ると、さっきまでと同じ真っ青な空が広がっていた。

平和、か……。

ウィリアムは腕をかざして、照りつける太陽を睨んだ。

これから始まる波乱を、予感していた。