高梨さんの日常



高梨を残して客間から出た。


「あ」



緑茶を持ってきたらしい姉が向こうから歩いてきた。

「あんた、ちゃんと出来た?」

「…わかんない」

心配げに聞いてきたけど、そんなことしか言えなかった。

「そっか。でも絶対いつかは聞いてあげるんだよ。高梨ちゃんはSOSだしてるから。」

「…うん」

わかってる。でも。

「無理やりにでも聞き出しなさい。余計なこと考えないで。あんたはいつも考えすぎるんだから。」

真剣な眼差しに、コクリと頷いた。

「高梨が喜ぶお菓子持ってくる」

「ほい、じゃあ、先行ってお茶だしとく」

ひらひらと手を振って客間に向かって行った。

俺より長く生きた四年は濃密だったんだろうか。

今更ながら姉の気回しの良さに尊敬する。



いつか、聞き出せる時が来たら。

散々甘やかして、俺に依存させてやる。

中毒になってしまえ。




俺はもう、高梨中毒だ。