高梨さんの日常



「あちゃー」

図書委員の仕事が終わって、玄関から外に出ると横殴りの雨。

「あ、傘忘れた。」

置き傘もしてないし、どうしよう。

「相合傘しようか?」

「ほんと?ありがと」

北条は大きい傘を持ってきていて、いれてもらった。

しばらく歩くと、もう靴の中までビショビショになった。

「これ、結構やばくね?」

「うん、コートも重くなってきた。」

ずっしりと水を含んだコートを軽く絞ると、ビシャアと水が出てくる。

「とりあえず、俺んち避難するか?近いし」

「………そうだね、うん、おねがい」


あまりに軽く言ってくるから少し戸惑ったけど、このまま濡れて帰るのも、と思ってありがたく甘えることにした。



「ただいまー」

「お邪魔します…」

やっぱり大きい家に圧倒されながらも中に入った。


「おお、おかえりーって!高梨ちゃんじゃん!!ほれ、入った入った!」


玄関に出てきた北条のお姉さんに大歓迎されて、むずがゆい。

家に帰って、おかえり、なんて言われるのは久々。

「どうしたの?姉貴はまあちょっとうるさいけど大丈夫だよ」

玄関先で硬直していると北条は少し心配そうに顔を覗き込んできた。

「うるさいってなによー!」

北条の言葉にお姉さんが頬を膨らます。

ポカポカと叩くお姉さんを笑って受け流す北条。