高梨さんの日常



「あの、高梨?…そろそろ…」


北条の声が聞こえて、ハッとして態勢を戻した。

「もっとくっついててもいいんだけど、ね。貸出希望の人とかがいるし、ね。」


言い訳みたいにそんなことをいうからまた抱きしめたくなる。しないけど。


心はあったかくなるけど、同時に心臓が暴れ出して苦しい。

壊れてしまいたくなる。

このまま北条が原因の心臓発作で死ねたら、なんて。


思考があまりにもブラックになってきたから、空を見上げた。

今日の空はどんよりとしていて、今にも雨が降りそうなくらい分厚い雲が広がっていた。