北条くんの日常



「俺さ、高梨がこの映画好きって初めて知ったんだ」

「え?うん、初めて言ったしね」

それで知ってたら怖いわ〜なんて冗談めいていう高梨に、言った。

「この映画だけじゃなくて、高梨が好きなものとか、食べ物とか、本の題名とか、全然知らないんだよ」

だから、教えて欲しいんだ。

いきなりそんなことを言い出した俺に、高梨は近づいて、手を握ってきた。

「ごめん、私、自分のこと話すの苦手で。不安にさせちゃったね」

鋭く心の内を見抜かれて、素直に頷いた。