今日も貴方のために私は総てを忘れた

信長の覇気で少し騒がしかった周囲が一瞬にして静まり返った。
やはり信長はただ者ではない。

「部屋は以前と同じところを使うが良い。あと、身の周りの世話は成利と琴に一任する。勝家、光秀、お前たちにも協力してもらう。よいな。」

「承知しました。」
「応。」
「よい。さて、用事は済んだ。我は自室にて休ませて貰うぞ。」

信長はそれだけ言うと後ろの襖を開けて奥の間へと姿を消した。

「はぁ…」
「お疲れさまでした。小白様。至らない処、ありますが精一杯務めさせていただきます。」
「僕も頑張ります。よろしくお願い致します!」

挨拶を済ませると先程から居る二人へと視線を向けた。

「あの…」
「ん?ああ!俺は柴田勝家だ!改めて宜しくな!」
「…明智光秀と申します。」

勝家は豪快に笑い飛ばし、光秀は掛けている眼鏡を押し上げると外に目をそらす。


「あの…先程はありがとうございました。光秀様…」
「嗚呼。信長殿のご命令でありますので…お気になさらず。」
「光秀は人見知りだな!」
「貴方はその五月蝿い声を何とかしてください。」
「貴方はそもそも…」

勝家と光秀は言い合いを始めた。
琴が小白の手を引いて「行きましょう」と言うと言い合いを始めた二人を置き去りに成利と琴、それから小白は広間を後にした。