「……ぷっ、ははははははははは!愉快、これは愉快だ。だが、」
「あの…？」

殿が近づくと寝着の首元部分を掴む。

「これは、いただけぬよ。冗談と言うならば今だ。今なら寛大な我が許す。」
「殿っ！おい、成利！お前も手伝え！」
「わ…わかった！」

豪快な…殿は暫くしてから落ち着きゆっくりと元、腰を下ろしていた場所に座った。

「もう一度問おう。雪音、本当に我の事を覚えていないのか？」
「はい。すみません…、さっきまでは名前も思い出せなく、」
「そうか…」

殿は目を伏せると溜め息をつきまた重々しく目を開ける。
まるで目の前の現実から目をそらすように。

「一度しか名乗らぬっ！よく聞け！記憶を亡くした力なき娘よっ！」

殿は立ち上がるとさっきとは打って変わって覇気を感じさせる雰囲気。

「我は織田信長！この城の…いずれはこの国の主となる者！」
「我に下れば良し！下らなければ貴様は敵の間者と見なし牢獄行きだ…！」