歩き出せ私たち





トモヤは、笑ってしまうくらいの間抜け面を晒している。
目は見開かれ、口も半開き。
いつにも増して、アホ丸出しだ。



「おま・・・電車」


「行っちゃったね。」


「ばっ・・・かだろ、何やってんだよもー・・・」



私に腕を掴まれたまま、しゅるしゅると力が抜けたように、その場にしゃがみこむ。
相当、驚いているらしい。
でも、こう見えて自分自身が一番驚いていたりする。
まさか、こんなに行動力があったなんて。
ノボルの奇行を馬鹿にすることもできないな、これは。



「さてと。どうしたもんかね。」


「もう好きにしろ・・・・」



私達以外誰もいない、静かなホーム。
静かすぎて、何だか気が抜ける。
そして、凍えるほど、寒い。
私の手から、ぶらんと力なく垂れ下がったトモヤの腕を、宙に頬る。
トモヤはうずくまったまま、もう何も言わない。

仕方なく私も、その場にしゃがんだ。
トモヤの顔を覗き込もうとすると、彼の頭が微かに動いたのが目に入った。



「ミオ、パンツ見えてる。」


「何色でしょう。」


「白と水色のボーダー。」


「ご名答。」



て、ふざけてる場合じゃない。
とりあえず寒い。



「行くよ。」


「どこに、」


「暖かいとこ。この辺って何ある?」


「映画館?」


「おっ。いいね。」



案外すんなり、行き先が決まった。
空は雪が降りそうな、色をしてる。