「あー、そうなんだよ。ごめんな、言ってなくて。」
隣に立って、同じように電車に揺られていたトモヤが、さらりとそんなことを言い出した。
トモヤだって、イラッとしたくせに。
なんでそんなに、へらへらしてるんだか、意味がわからない。
「てことで、俺ら二人で話したいから、また学校でな」
ひらひら大きな手を振ると、トモヤは私の左腕を掴んだ。
何か言いたそうな顔をする二人を置いて、私は隣の車両まで、手を引かれるまま、黙って歩いた。
馬鹿みたい。
あの状況を切り抜けるために平然とあんな嘘までついて。
空いている席に、並んで腰を下ろす。
掴まれてた腕が、微かに痛い。
「機嫌悪いの分かりやすすぎんだよ、お前は。気ぃ遣うだろ。」
「うん、分かってる。けど、今まで通りが、うまくできなくなってきた。」
両手で顔を覆う。
考えているんだ。
今まで私は、どんなふうに笑って、どんなふうに、二人と関わり合ってきたかって。
ああ、もう終わったんだ。
って、気付いた。
10年間続いた私達の関係は、いとも簡単に、あっという間に、崩れた落ちた。

