嫌な予感がしたのは、隣にいたトモヤも同じだったようだ。
一瞬、目を見合わせてから、後ろを振り向く。
あ・・・やっぱり・・・
「アキナと、ノボル・・・」
トモヤが呟いた。
二人は、しっかり手を握り合い、開いた方の手でこちらに手を振っている。
本人達は見せつけてるつもりもないのだろうけど、仲睦まじく密着する二人の姿は、嫌味でしかない。
アキナはノボルの手を引いて、おはよー、と私達の目の前まできた。
朝から、元気だ。
私は反応に困って、うん、と小さく頷くだけに留めておいた。
口を開けた電車に、いつぶりかに四人で乗り込んだ。
ここは田舎だから、通学通勤ラッシュの時間帯でも、東京ほど混雑しない。
アキナとノボルは空いていた席に腰を下ろし、私とトモヤはその前のつり革に掴まった。
まだちらほら空席はあるけれど、とても離れた席に座るような空気ではない。
「それにしても、四人揃うなんて久しぶりだね」
アキナは終始、ニコニコしている。
そんな能天気でKYなところが彼女の良いところであり、少しばかり殺意を覚えるところでもある。
朝、目覚ましを見た時に、嫌な予感はしたのだ。
それが、今まさに的中した。
つり革に掴まりながら、がっくりと肩を落とす。
でも、ここで二人から離れるのはいくらなんでも不自然すぎるから、動くこともできない。
何が楽しくて朝っぱらからカップルがいちゃつく様子を見せつけられなければならないんだ・・・。
ほんとだなー、と何事もないような顔で答えてしまうトモヤを、心底尊敬する。
「そういえば、二人、付き合ってるって噂、本当だったんだ」
急に方向転換したのは、ノボルだった。
突拍子もないことを言うのはいつもの癖だ。
でも、いつもみたいに軽く受け流せないのは、この一言をノボルの口から聞いてしまったからだろうか。
こんな根も葉もない噂話を私達には確認もせずに信じこむなんて、ショックを通り越して腹が立ってくる。
自分らのこと以外、なんも見えてねーのかよ。バカップルが。

