歩き出せ私たち





トモヤは分かりやすい。
それは本人も自覚済みらしい。

さりげなくアキナの荷物を持ってあげたり、庇ったり。
昔から、そうだった。

いつもは馬鹿やって騒いでるくせに、アキナの前では良いとこ見せようとする。
でも、彼女とかできたら、大事にしそうなタイプだ。

トモヤの気持ちには、とっくに気付いてた。
それにトモヤも、私の気持ちには気付いている筈だ。

ノボルは、ちょっと変わっている。
ぼんやりしてて、無口で。
でも顔は整ってるから、今までずっと、モテてきた。
どうやら私も、その中の一人だったらしい。

アキナのものになってから気付くなんて、哀れな話だ。



「あいつ、お前らも付き合えばいいのにってさ」


「ふふ、へぇ」


「お似合いらしいよ、なんか、俺ら」


「そしたらWデートできるね」


「地獄だな」



そして、二人で静かに笑い合った。
慰め合うわけでもなく、愚痴を言い合うわけでもなく、ただ、泣いてるみたいに笑った。