歩き出せ私たち






「馬鹿だろ、」



トモヤがようやくこっちを向いた。



「てか・・・泣いて、ないし。」


「泣きたくても、泣けねーよ。お前の前じゃ。」



黙って私に、ハンカチを突っ返す。
からかわれてたのかな。
でも、確かに、泣きそうな顔はしてる。

もしかして、私が泣きやすい空気を作ってくれてたとか?
そんなの、無駄なのに。

結局、泣けないのはこいつも一緒だった。



「つか・・・キスしたら、泣くの?」


「泣くかもね。」


「かもね?」


「泣く。絶対。」


「ははっ、そんなしてーのか、俺と。」



笑ってるけど、乾いてる、泣きそうな顔。
胸が苦しい。
キスなんかしたら、ほんとは終わるって、知ってるんだ。

ノボルのときも、そうだったから。

でも、気になってしまった。
トモヤとキスをしたら、私達はどうなるのか。