歩き出せ私たち





本人の意思を無視するわけにはいかないけど、私と関わり続けることって、トモヤにとってマイナスでしかないと思う。

こんな辛気くさい女と共に過ごしてきた思い出しかない学生生活なんて、あまりに哀れだ。



「私たち、お互いにとって、駄目な関係だと思うんだ。私は、トモヤと友達同士で居続ける限り、トモヤの前じゃ、泣けないんだよ。」


「・・・なんで?」


「友達には、弱さを見せたくないの。トモヤも、同じでしょ?」


「じゃあ、恋人なら、いいのかよ。」



苛立ち混じりの声が、誰もいなくなった劇場に、静かに響いた。

お互い、顔を合わせないまま、重苦しいトーンで会話は続いていく。



「でも、トモヤは私とキスとか、できないでしょ?」


「・・・・・・・」


「試しに、キス、してみる?」



そっぽを向いていたトモヤの頭が、少し、動いた。
さぞかし戸惑っているに違いない。
私には、全部分かる。
トモヤの気持ち、全部。

だって、やっぱり私達、とてもよく似てる。