歩き出せ私たち






エーエム10時20分

映画館へ戻り、受付に並ぶ。
並ぶ、と言っても、人は数えられるほどしかいない。
平日のこの時間じゃ、当然か。

目当ての映画の名前を告げると、受付係の女性が、上映は二時間後になりますが、と私達の顔を、交互に見た。



「だってさ。どうする?」


「そうだなー・・・今からだと、どんなのがやってるんですか?」


「そうですね・・・こちらなんか、10時30分からの上映になりますが、いかがですか?」



女性が私達に勧めるようにとある映画のチラシを一枚、ぴらっと突き出した。
知らない映画だけど、一目見て、恋愛ものだと分かるようなチラシだ。

反応を見るようにトモヤの方を見ると、彼もこっちを見ていた。
その表情から、やめとこうぜ、みたいな空気がひしひしと伝わってくる。

確かに、恋愛ものというのは、分野じゃないにも程があるが・・・
たまには面白いかもしれない。



「あ、じゃあそれにします。」


「はぁっ!?」


「はい、分かりました。お二人様で、お取りしますね。」



嫌そうなリアクションをもはや隠そうとしないトモヤを無視して、女性はにこりと眩しい営業スマイルを見せた。

二人で千円ずつ出し合い、チケットを受け取る。
上映時間まであと10分後。
もう開場は始まっているらしい。



「トモヤ。私、ポップコーン食べたい。」


「はいはい分かったよ。」


「あはは、ありがと。トモヤは良い彼氏になりそうだよね。」


「はいはい。飲み物は?」


「コーラ!」