歩き出せ私たち






「また行くあてなくなっちゃったね。」


「どうするよ。」


「あ、公園。」



視線の先に、遊具もなにもない、かろうじてベンチがあるだけの小さな公園。
公園っていっていいのかな。これ。
でも、この辺りは住宅街で何もないし、店だって、今の時間じゃコンビニくらいしかやってない。



「座るか、とりあえず。」


「うん。座ろう。早く漫画読みたいし。」


「は?俺その間どうすりゃいんだよ。」


「さぁ知らない。黙想してれば?」


「嫌だよ。」



小さい木製のベンチに、並んで座る。
トモヤは黒いマフラーの隙間から白い息を吐き出した。
暖かそうなマフラー。



「それ、貸して。」


「ん?どれ」


「その、マフラー」


「俺の唯一の防寒具なんだけど」


「知らない。」



マフラーを無理矢理剥ぎ取って、自分の首に巻き付ける。まだ体温が残ってて、少し暖かい。
トモヤは更に寒そうに身を縮めた。



「はぁ、さむ・・・」


「ふふ。」


「人のマフラー奪っといて、なに笑ってんだよ。」


「ねえトモヤ」


「なんだよ、」


「恥ずかしいこと聞いていい?」


「だから。なに?」


「アキナの、どこが好きなの?」