歩き出せ私たち






この町で、一番大きな映画館が見えてきた。
とは言え、今は営業時間外。
開くのは約一時間後だ。



「ねーどーする?寒いんだけど。」


「んじゃあ・・・とりあえずそこのコンビニ入るぞ。」



トモヤが指差す先に、24時間営業のコンビニがあった。
このままずっと外で時間を潰してるよりはマシか。
私も同意して、二人でコンビニに入る。

コンビニっていったって、そんなに長居できるわけでもないけど。
なんか暖かい飲み物とか、買おう。

だらだらと店内を物色する。
雑誌コーナーの横に、新刊の漫画がずらりと並んだ棚があるのが目に止まった。

あ、この漫画、新刊出てたんだ。

透明のビニールに包まれたそれを手にとって、背表紙を確認する。
これって、前回どこで終わったっけ。



「ん?それ、買うの?」


「うーん・・・どうしようかなぁ・・・」



漫画の表紙とにらめっこして、諦めて、棚に戻す。
今月は出費多いし、少しは節約しなければ。



「何?買わねーの?」


「うん。いい。」


「俺、買ってやろーか?」


「え?」


「何だよその顔。そんな意外かよ。」



それはまぁ。意外ですとも。
今目の前にいる男が、そんなどっかの社長が年下の愛人にするみたいに、簡単に金を出すようなやつには見えない。
だから、まぁ、意外ですとも。



「いや。でもいいよ。悪いし。」



それに後からしれっと代金請求されても困るし。



「いーんだよ、そんなん。プレゼントだよ、ちょっと早いクリスマスプレゼント!」


「え?」


「俺にだけは気ぃ使うな。貸せよ、それ。」



言われるまま、棚に戻した漫画を、再び手にとって、トモヤに渡す。



「安心しろ、貸し作ったとか思ってねーから。それに俺もこれ、借りるし。」




そう言って漫画をひらひらと揺らしながら、レジへ向かう。
プレゼントって・・・・なんて色気のないプレゼントだ。
まぁ、急にアクセサリーとか貰っても困るし、この方が私達らしいから、いいけど。
それに、結局漫画目当てなんじゃないか。

私も、ホットの生姜湯を手に、レジに並ぶ。
店内にある掛け時計を確認して、まだそんなに時間が経っていないことを知り、絶望的な気持ちになった。