そして今現在、ちえはルイスに昨日と同じ状態で壁と彼に挟まれている。


(…何でこんなことに……)


先程、HRが終わり帰りの支度をしていると彼が教室で話があるとちえに話しかけ、周囲の注目を浴びながらふたりで後にした。

ルイスの有無を言わせない笑みをみた彼女は断ることが出来ず、彼の後ろに続いたのだが、彼が入ったのは空き教室だった。

ちえは本能的に逃げようとしたがあえなく捕まりこの状況がつくりだされた。


「…君さぁ」


びくり、身体を震わす。昨日聞いた声よりもさらに低く不機嫌さを隠そうともしていない。


「僕のこと、嫌いなわけ?」

「え…?」


驚いて彼を見上げると、眉間に皺を寄せているものの悲しげに瞳を揺らしていて息を呑む。


「君が作り物の僕は嫌だっていうから、今朝君には本当の僕を見せたのに」


彼女の肩に自分の額を押しつけるルイス。


「どうして、目を反らすの。作り物の僕も本物の僕も嫌いなの?」

「トムリアムく…」

「ルイス!」


ギュッと腰に腕をまわしきつく抱き締めてちえの言葉を強く訂正する。