「っ!」


ルイスはふわっと綺麗な笑顔でちえに微笑む。
それを視界で捉えた瞬間どくりと胸が大きく動き、慌てて顔を反らした。


「本当に苦手なのな、アイツのこと」


浩が困ったように肩をすくめるが、内心違うと否定する。

今のは、違う。苦手とかそういうのじゃない。


(…あれは、本物の笑顔だ)


ギュッと胸を押さえる。まだドキドキして苦しい。自分だけに向けられたと思うとさらに苦しくなった。


「おい、蓬田?どうした?」


ハッとして顔を上げると、浩は心配そうに眉を寄せている。


「お前、顔赤いぞ?」

「え…」


言われてさらに顔に熱が灯り両頬を素早くおさえた。


「大丈夫か?保健室行くか?」

「あ…えと、大丈夫だよ。ありがとう」

「そうか?無理すんなよ」


彼は気遣わしげにしていたがそれ以上何も言わず前に向き直る。


(…とりあえず一安心)


安堵の息を吐くと、ちえはどくどくと音をたてる心臓に耳を傾けながらルイスが見せた笑みに嬉しさを噛みしめていた。