「一時間目は国語、と…」


とんとん、と教科書とノートを机の上で整えるのは蓬田ちえ(ヨモギダ)。胸辺りまで緩くふたつにみつあみした黒髪に眼鏡、模範的に制服を着こなしている女子高生だ。


「はよーっす、蓬田っ!」

「…あ、おはよ」


彼女に声をかけてきたのは宮内浩(ミヤウチコウ)。健康的な肌に短髪でクラスの中心的人物といっていい。


(……宮内くんは地味な私にもいつも挨拶してくれるんだよね)


中学の時からそうだ。誰にも気さくで明るい性格のため皆から好かれていた。

勿論、ちえも彼に人として好意をもっている。


「蓬田」

「うん?」

「アイツ、来たみたいだぜ」


ジッと後ろの扉の方に目を向け、彼女に見るよう促す。

それに流されるように視線を向けると同時に女子がざわめきだした。

教室に入ってきたのは、鮮やかな黄金色の髪の毛を揺らすルイス=トムリアム。彼はイギリス人だが親の仕事の都合で二週間前に転校してきた。


「ルイスくんっ、おはよっ!」

「おはよう」


クラスの女子はにこりとルイスに微笑みを向けられ、ポッと頬を赤く染める。それに続くように女子も男子も彼に声をかけた。