「久しぶり」とその人は言う。パーマがかった茶髪は少しだけ色が落ちていた。そして私が真っ先に目を落としたのは彼の指だった。金のリングがキラリと光る、本当にただのリングだった。
彼は子供と一緒に来ていた。滑り台に乗る小さな男の子はたしかに彼と目元がとても似ていた。
「今は里帰り?」
私はあんまりにも自分が普通で、想像と少し違ったので、拍子抜けして表情が緩んだ。
「ああ、隼人がおばあちゃんに会いたいってうるせぇからな」
仕方ないなぁ、と続くような苦笑はとても優しく慈しむみたいに。
「そっか。隼人くんいくつ?」
「四歳。よく走り回るから俺とおんなじように駅伝とか出てほしい」
「アハハ、ベタ甘だね」
声をあげて笑った。とても素直に愉快だった。
こんな風に笑えるなんて思ってなかった。
もう、私は、完全に、
「そういえばそのいっぱいのタンポポなんだよ」
「私、おはなのようせいだから」
「は?意味わかんねえし。」
「覚えてないの?よく、私と一緒にままごとした時にこの砂場にいっぱい花を敷き詰めたのに」
「いや、この年だからだよ。まさかまだやってんの?」
「ううん、もう、終わり」
もう既に綿毛になっていた。
幼い夢は。

