「王子、それ持っててよ。俺暑くて邪魔なんだよね。」
浅倉はわたしの持つジャージを指差した。
「え、なんでわたし荷物持ちなの?」
不満を告げると、浅倉は口角をキュッと持ち上げた。
「じゃあ着てたらいいよ。──…王子、寒そうだし?」
「───……っ!」
なんだそれ。
不意討ちはやめてよ。
浅倉が全てわかりきったように笑うから、わたしは言い返しにつまった。
その間に、浅倉は南くんに連れられて行ってしまう。
「あー…浅倉くんと、仲いいのね。」
かなちゃんはどこか気遣うように言っているが、目は好奇心に満ち溢れていた。
「っ~……仲、よくないし…」
せめてのも抵抗も、ずいぶん空しく聞こえる。


