「ね、誰か絆創膏持ってない?紙で指切っちゃってさぁ、」
人に頼られるのは、案外悪い気はしない。
「あ、それなら『王子』が持ってるよ?」
でもそこに「あだ名」もついてくると、ちょっとだけ抵抗したくなる。
「あ、ホント?ありがとね、浅倉くん。」
「いえいえー。王子ー、絆創膏ちょうだーい」
わたしはそこにいる女子と話していた男子1人に視線を投げた。
彼…──浅倉 翔太は、わたしに笑顔を向けていた。
それはもう、完璧に確信犯だとわかる作り笑いを、だ。
わたしは何も言わずにポーチを取り出した。
それを持って、2人の元へ行く。
絆創膏を取り出し、女の子には笑顔を見せた。
「はい、どーぞ。」
「ありがとー、王子!」