『君が長澤さん? 美術部の2年は君だけだって先生に聞いたんだけど。選挙ポスター作りに協力してくれないかな?』


神林くんがわたしの前に現れたのは数週間前のこと。

それまで同じクラスになったこともなければ、話をしたことさえもなかった。


ただわたしが一方的に恋心を抱き遠くから彼を見ていたというだけで…。



神林くんは学校で目立つ存在だった。

かっこよくて、成績優秀で、スポーツ万能で。

いつも笑顔で誰にでも優しい…。


彼の周りには男女関係無く人が集まり、いつだって輪の中心にいる。


教室の隅っこでひとりノートに絵を描いてるわたしとは天と地ほどの差があって


彼がわたしのことを知らないのは当然のことだった。


『協力してくれると助かるんだけど。どうかな?』


みんなの輪の中で見ていた神林くんがわたしだけを見つめてて。

少しでもわたしの存在を彼の瞳の中に映しておきたい。

ほんの一時でもいいから…。


そんな思いから


『…わ、わたしで良ければ…』


ポスター作りを引き受けたんだ。