あっさりさっぱり気質の渡辺さんと話をしているうちに、ずっと底辺をさ迷っていたテンションも多少上向きになったようで、同僚達の賑やかなやり取りに顔を綻ばせつつ、オレは目の前の椅子を引き寄せ、よっこいせ、と腰かけた。
本調子とまではいかないけれど、午後は比較的、穏やかに冷静に仕事をこなす事ができた。
「お先に失礼します」
18時になったので、遅番の窓口担当の同僚達に挨拶しながら休憩室へと向かう。
ネームプレートとエプロンを外してロッカーの中に仕舞い、ハンガーにかけておいたジャケットを手に取り羽織った。
次にリュックを取り出して背負い、ロッカーの扉を閉めて施錠すると、テーブルの前で井戸端会議をしていた渡辺さんと同僚数人に「お疲れー」と声をかけつつ出入口へと歩を進める。
「あ、お疲れ様でーす」
「月曜日までさよーなら!」
「気を付けて帰って下さいね~」
それらの声に送られながらオレは廊下に出てドアを閉め、階下に降りるべく階段を目指した。
一階に到着し、いつもだったらこのまま真っ直ぐ進んで進行方向左手、建物西側にあるスタッフ通用口から外に出る所だけれど、今日はその手前にある「関係者以外立ち入り禁止」のプレートが貼ってあるドアを開けて、中に入った。
古くなったり、利用頻度が低くなった資料などを保管しておく、一般利用者には開放していない書庫。
ここにも検索や貸出、返却等が出来る端末機が設置してあるので、それを使い、資料の保管状況を調べるつもりだった。
吾妻さんが言っていた、聖くん事件の詳細が綴られているというあの本の……。
オレは入口付近にあるデスクに近付くと、その上の端末機を操作して、検索する為のメニューを開いた。
「最後の聖夜…と」
書名を入力し、エンターを押すと、ほどなくして結果が表示される。
この図書館では当該資料を2冊所蔵していて、1冊は一階の一般書コーナー、もう1冊は書庫が保管場所であるという事と、両方貸出可能であるという情報が確認できた。
「やっぱここにあったか…」
呟きながら、請求記号を確認し、画面を初期メニューに戻した後、現物を探すべく書架の森の中へと分け入る。
ちなみに、勤務後にプライベートな用件で書庫に入って端末機を使ったり、書架を見て回る行為は、特別禁止されたりはしていない。
本調子とまではいかないけれど、午後は比較的、穏やかに冷静に仕事をこなす事ができた。
「お先に失礼します」
18時になったので、遅番の窓口担当の同僚達に挨拶しながら休憩室へと向かう。
ネームプレートとエプロンを外してロッカーの中に仕舞い、ハンガーにかけておいたジャケットを手に取り羽織った。
次にリュックを取り出して背負い、ロッカーの扉を閉めて施錠すると、テーブルの前で井戸端会議をしていた渡辺さんと同僚数人に「お疲れー」と声をかけつつ出入口へと歩を進める。
「あ、お疲れ様でーす」
「月曜日までさよーなら!」
「気を付けて帰って下さいね~」
それらの声に送られながらオレは廊下に出てドアを閉め、階下に降りるべく階段を目指した。
一階に到着し、いつもだったらこのまま真っ直ぐ進んで進行方向左手、建物西側にあるスタッフ通用口から外に出る所だけれど、今日はその手前にある「関係者以外立ち入り禁止」のプレートが貼ってあるドアを開けて、中に入った。
古くなったり、利用頻度が低くなった資料などを保管しておく、一般利用者には開放していない書庫。
ここにも検索や貸出、返却等が出来る端末機が設置してあるので、それを使い、資料の保管状況を調べるつもりだった。
吾妻さんが言っていた、聖くん事件の詳細が綴られているというあの本の……。
オレは入口付近にあるデスクに近付くと、その上の端末機を操作して、検索する為のメニューを開いた。
「最後の聖夜…と」
書名を入力し、エンターを押すと、ほどなくして結果が表示される。
この図書館では当該資料を2冊所蔵していて、1冊は一階の一般書コーナー、もう1冊は書庫が保管場所であるという事と、両方貸出可能であるという情報が確認できた。
「やっぱここにあったか…」
呟きながら、請求記号を確認し、画面を初期メニューに戻した後、現物を探すべく書架の森の中へと分け入る。
ちなみに、勤務後にプライベートな用件で書庫に入って端末機を使ったり、書架を見て回る行為は、特別禁止されたりはしていない。

