しかし幼いこうき君にはそんな大人の複雑な感情はまだまだ読み取れないらしく、勢い良く立ち上がると、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「ぼくね、なんだかわからないけど、このお部屋からお外に出られないの」
「え」
そ、それはいわゆるじばくれ……。
「だからお部屋で一人であそんでたんだ~。それがつまらなくなったらおねんねしちゃってたんだけど、お兄ちゃんたちとお友だちになれたから、これからはすっごく楽しくなるよね!」
「うん。そうだね」
「あ、そ、そうだ」
吾妻さんがやさしく同意した所で、オレはその事に気が付いた。
「それじゃあ、自己紹介をしておかなくちゃね。オレの名前は比企翼。そしてこっちのお兄ちゃんが…」
「吾妻理貴だよ」
「『たすく』と『りき』って覚えてね」
「んと…、たすくお兄ちゃんと、りきお兄ちゃん…」
こうき君は聞いたばかりの名前を忘れないよう、オレ達に順番に視線を向けながら、一生懸命復唱した。
そのしぐさがまぁ、何とも言えず可愛らしいこと……。
三度、鳩尾キュ(以下略)が襲って来た所で、ようやくオレは自覚した。
そうか。
今までその言葉の意味がイマイチ掴めなかったけれど、これがいわゆる『萌え』というものなのか…!
それを体感でき、感動にうち震えているオレをよそに、こうき君は「ん?」と不思議そうな声を上げると、吾妻さんに問い掛けた。
「ぼく、まだお名前を言ってなかったのに、なんでりきお兄ちゃんは知ってたの?」
「ああ、それはね」
オレがその鋭いツッコミに一気に我に返り、ギョッとしている間に、吾妻さんは難なく返答する。
「大家さんがずっと前に、『昔この部屋に山田聖くんっていう男の子が住んでいたんだよ』って言ってたから、そうじゃないかな~と思ったんだ」
普通は以前の居住者の名前を大家さんが他人に明かしたりはしないだろうけど、これまた幼いこうき君には分からなかったようで。
「そっか~」
素直に納得し、無邪気に言葉を繋いだ。
「むかしじゃなくて、今も住んでるんだけどな~。でも、見えないんだからしかたないよね」
「…そうだね」
話が一段落した所で、こうき君は「ふぅ~」と言いながら、その場に足を伸ばしてペタン、と座り込んだ。
「ぼくね、なんだかわからないけど、このお部屋からお外に出られないの」
「え」
そ、それはいわゆるじばくれ……。
「だからお部屋で一人であそんでたんだ~。それがつまらなくなったらおねんねしちゃってたんだけど、お兄ちゃんたちとお友だちになれたから、これからはすっごく楽しくなるよね!」
「うん。そうだね」
「あ、そ、そうだ」
吾妻さんがやさしく同意した所で、オレはその事に気が付いた。
「それじゃあ、自己紹介をしておかなくちゃね。オレの名前は比企翼。そしてこっちのお兄ちゃんが…」
「吾妻理貴だよ」
「『たすく』と『りき』って覚えてね」
「んと…、たすくお兄ちゃんと、りきお兄ちゃん…」
こうき君は聞いたばかりの名前を忘れないよう、オレ達に順番に視線を向けながら、一生懸命復唱した。
そのしぐさがまぁ、何とも言えず可愛らしいこと……。
三度、鳩尾キュ(以下略)が襲って来た所で、ようやくオレは自覚した。
そうか。
今までその言葉の意味がイマイチ掴めなかったけれど、これがいわゆる『萌え』というものなのか…!
それを体感でき、感動にうち震えているオレをよそに、こうき君は「ん?」と不思議そうな声を上げると、吾妻さんに問い掛けた。
「ぼく、まだお名前を言ってなかったのに、なんでりきお兄ちゃんは知ってたの?」
「ああ、それはね」
オレがその鋭いツッコミに一気に我に返り、ギョッとしている間に、吾妻さんは難なく返答する。
「大家さんがずっと前に、『昔この部屋に山田聖くんっていう男の子が住んでいたんだよ』って言ってたから、そうじゃないかな~と思ったんだ」
普通は以前の居住者の名前を大家さんが他人に明かしたりはしないだろうけど、これまた幼いこうき君には分からなかったようで。
「そっか~」
素直に納得し、無邪気に言葉を繋いだ。
「むかしじゃなくて、今も住んでるんだけどな~。でも、見えないんだからしかたないよね」
「…そうだね」
話が一段落した所で、こうき君は「ふぅ~」と言いながら、その場に足を伸ばしてペタン、と座り込んだ。

